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池上彰「世界を変えた10冊の本」を読み終えて
                (2015.02.02)
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以前から、関心のあったテーマを扱った、
第7章「沈黙の春」や、
第8章「種の起源」は、
ここは、さておいて、ここでは、経済政策のもと
になった経済理論についてだけを列挙します。
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まずは、
第5章「資本論」
マルクスは資本主義の欠陥を明らかにしました。
膨大な商品や労働者や資本家や市場原理の話から。
かくして、それに替わる社会主義を名前だけ提示
しましたが、社会主義経済は何の提示もしません
でした。
なのに、こぞって、ソ連・中国・キューバ等社会
主義国家?が生まれましたが、いずれも経済で壁
に突き当り衰退し、資本主義に回帰しました。
イデオロギー的社会主義で夢を見て社会主義経済
の成功は一国もありませんでした。
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次は、
第9章「雇用、利子および貨幣の一般理論」
いわゆるケインズ経済学です。
資本論で警告された世界恐慌による資本主義の危
機を、ケインズ経済学は打ち破り、克服しました。
戦後、世界中の国々はケインズ理論で恐慌を免れ
ましたが、見返りとして大きな政府、規制の多い
政府、慢性的赤字に苦しむ政府を生みました。
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最後は、
第10章「資本主義と自由」
フリードマンの提唱した、いわゆる、リバタリア
ニズム。自由至上主義。
政府の介入を極力減らし、小さな政府で個人の自
由を競争を促す。言ってみれば、強者の論理です。
竹中平蔵氏や小泉首相がこの政策をとりました。
ただ、フリードマン自身は自由主義を行き過ぎて
年金すら反対を唱え、いずれ、日本の国民皆保険
による健保制度すら反対しかねません。
投資家を自由放任させたあげく、ついにリーマン
ショックを迎えました。
自由とは、自分勝手ではいけなかったのです。
やはり、国家の統制が必要だったのです。
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この後は、再び、長期デフレ不況でした。
民主党は緊縮財政、支出の切り詰め一辺倒。
これでは不況を招くのはケインズが言ったとおり。
ここからの脱出は、ケインズ理論の再登場でした。
アベノミクスです。
不況でも財政緊縮させず、財政出動させたのです。
その中で、ギリシャやポルトガル、アイルランド
等は、ケインズ理論による、不況下の財政投資で
政府の極度の財政赤字を招き、現在に至ってます。
ケインズ理論の欠陥も現れたのです。
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結局、一つとして完璧な経済理論はないのです。
マルクス、ケインズ、フリードマン、彼らの理論
を国家は経済政策に採用しましたが、問題が幾つ
もありました。
政治家は知識人のように、経済理論・知識だけで
動かないものだと言うことです。
自らの選挙基盤の維持の力で動きますので、経済
政策が捻じ曲げられました。
理論通りにいかなかったんです。
そればかりではありません。
経済理論の効能ばかりに目をとらわれ、いつまで
もその政策をとり続け、経済理論の副作用は分か
っていたのに、副作用の回避政策をとれない事情
が政治家の選挙基盤(国民?)にあったのです。
それがギリシャ等の国々です。
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平成26年10月3日        中村三郎

<余談>
トマス・ピケティ氏の「21世紀の資本」から…
資産家が得る運用益は、経済成長に伴い一般人の
所得より大きく伸びるので、低成長下の先進国で
は放置すれば「持てる者」と「持たざる者」との
格差が更に広がると。(資本収益率>経済成長率)
人口減少が進む先進国では、相続する資産がもの
を言う「世襲社会」が復活しつつあると指摘。
資産家に資産に応じた高率の税を課す「累進課税」
により「最上位の富裕層に富が集中しすぎないよ
うにすることと、比較的資産の少ない若い世代を
優遇する税制にすべきとの考えを示す。
親の収入による教育格差の拡大にも懸念を示す。
大企業やお金持ちが潤い、じわじわと中小企業や
低所得者に及ぶのではとする「トリクルダウン」
の主張に対し、過去を見回してもそうならなかっ
たし、未来でもうまくいく保証はないと否定。
経済的な不平等は政治的な発言力の格差にもつな
がり、民主主義が脅威にさらされる。…と格差の
世襲化に危機感を抱く。
書評:資本主義の暴走に対する不安から議論沸騰。
専門家は自国経済事情との相異を掲げ批判に終始。